データ復旧とバックアップの違い|復旧できないケースを防ぐ方法

パソコンや外付けHDD、NAS、RAID、スマホなどのストレージ障害は、ある日突然やってきます。しかも多くの人が、いざという時に「バックアップがあるから安心」と思っていたにもかかわらず、復元できない・欲しい版がない・同期のタイミングがズレているなどの理由で、取り返しのつかない損失に直面します。これは「データ復旧」と「バックアップ」が似て非なる概念であり、目的・仕組み・前提条件が根本的に違うからです。
本記事では、データ復旧とバックアップの本質的な違いを初学者にも伝わる言葉で整理しつつ、専門家視点で復旧不能に陥りがちな典型パターンと、今日から実践できる再発防止と被害最小化の設計を徹底解説します。個人・法人どちらにも役立つよう、RPO/RTO、スナップショット、バージョニング、WORM(書き換え不可)などの実務的キーワードも丁寧に扱います。
データ復旧とバックアップの基本的な違い
データ復旧(Data Recovery)は、壊れた媒体・壊れた論理構造・消えたファイルを「後追いで取り戻す」行為です。障害の種類や損傷の程度に左右され、必ずしも成功するとは限りません。クリーン設備、専用機材、経験のある技術者が成功確率を大きく左右します。
一方でバックアップ(Backup)は、障害が発生する前提で、データを複製し、別の場所・別の形式で安全に保管する予防的な施策です。バックアップの品質(頻度、冗長性、検証)次第で、復旧の難易度とダウンタイムが劇的に変わります。
- 目的:復旧=失われたものを取り戻す/バックアップ=失われても困らない状態をつくる
- 成功率:復旧=不確実/バックアップ=正しく運用すれば高確度
- コスト発生:復旧=障害後に高額化しがち/バックアップ=平時の固定費でコントロール
- 前提:復旧=障害の発生後に対応/バックアップ=障害の発生前に備える
データ復旧の仕組みと対応範囲(論理障害/物理障害)
論理障害の典型例
- 誤削除・誤フォーマット・パーティション喪失
- ファイルシステム破損(NTFS/EXT/APFS/HFS+など)
- 暗号化・BitLocker/FileVault関連のメタデータ不整合
- RAIDのメタ情報破損・順序ズレ
論理障害はツールアプローチが可能ですが、上書き・スキャン負荷・SSDのTRIMなどにより成功率が低下します。安易なソフト試行は危険です。
物理障害の典型例
- ヘッドクラッシュ、プラッター傷、回転不良、基板焼損
- コントローラ故障、NAND不良(SSD)、水濡れ、落下衝撃
物理障害はクリーン設備と専用機材(例:PC-3000)、ドナー部品、顕微作業などが必須。通電・再起動の繰り返しは症状を悪化させます。
バックアップの目的と方式(フル/差分/増分/世代管理)
方式の整理
- フル:毎回全体をコピー。復元は簡単だが容量大。
- 差分:前回フル以降の変更のみ。復元時は「最新フル+最新差分」。
- 増分:直近バックアップからの変更のみ。容量効率◎、ただし復元チェーンが長くなるとリスク。
世代管理(バージョニング)
誤削除・改ざん・ランサムウェアに備え、複数の世代を保持します。保持期間と保存ポリシー(例:30日/90日/1年)をルール化し、自動整理で運用コストを抑えます。
保管先の多様化
- ローカル:USB/HDD/NAS。高速・低コストだが災害リスク。
- クラウド:可用性・遠隔性◎。帯域/課金/機密管理に配慮。
- オフサイト:遠隔拠点・保管庫。災害に強い。
RPO/RTOで考える「間に合う」設計
- RPO(復旧時点目標):どこまで時間を巻き戻せれば業務が耐えられるか。例:RPO=4時間 → 4時間ごとのスナップショットが必要。
- RTO(復旧時間目標):どれくらいの停止に耐えられるか。例:RTO=2時間 → リストア自動化やホットスタンバイが必要。
家庭なら「毎晩の自動バックアップ+30日版管理」で十分でも、ECサイトやSaaSでは分単位のスナップショット+冗長構成が求められます。データ価値×停止許容=設計の強度です。
「復旧できない」代表ケースと原因(実例で理解)
- SSDのTRIMが走った:削除データ領域がゼロ化・再利用で実体消失。論理ツールではどうにもならないことがある。
- RAID崩壊後に再初期化:再構築で上書き発生、メタ情報喪失。正しい順序・ストライプ幅の復元が困難に。
- ヘッド異音なのに通電継続:プラッター二次損傷で磁気面が削れ、回収不能に陥る。
- 復旧ソフトを乱用:メタデータを上書きし、論理的痕跡が消滅。
- 同期型サービスのみ:誤削除が即時に全端末へ反映、良いコピーまで消える(バージョン保持がカギ)。
復旧不能を防ぐバックアップ戦略:3-2-1とゼロトラストの実践
3-2-1ルール
- 3つ以上のコピー(本番+バックアップ×2)
- 2種類以上の媒体(HDD+クラウドなど)
- 1つはオフサイト(遠隔・クラウド・保管庫)
追加の現代要件
- immutable/WORM:ランサムウェアでも書き換え不可の領域を持つ。
- 隔離(air-gap/仮想隔離):管理ネットワークから論理的に切り離す。
- バージョニング+長期世代:「静かに進行」する改ざんに耐える。
- 暗号化+鍵分離:鍵管理(KMS/物理トークン)を別管理に。
スナップショット運用
頻度(例:15分/1時間/毎晩)×保持期間(30日/90日/年単位)をSLAと照合し、復元テストで実効性を検証します。
ツール/サービス選定の要点(個人・法人別)
個人向けの考え方
- 写真・動画中心:クラウド写真サービス+外付けHDD 2台の二重化
- PC全体:ディスクイメージ(フル)+増分、月1でブートリカバリ検証
- スマホ:クラウド同期+月次オフラインエクスポート
法人向けの考え方
- NAS/ファイルサーバ:スナップショット+レプリカ+WORM
- 仮想基盤:イメージベース増分+重複排除、DRサイトへ転送
- SaaS(M365/Google Workspace):別ベンダのSaaSバックアップで独立コピー
- データベース:論理ダンプ+物理スナップショットの二層
運用フェーズ:監視・演習・レビューで仕組みを強くする
- 監視:失敗ジョブ/容量逼迫/エージェント死活を通知
- 演習:四半期ごとのリストア訓練でRTO/RPOを測定
- レビュー:構成変更・人事異動・新規SaaS導入時は必ず見直す
もし故障・消失が起きたら:正しい初動手順
- 通電を止める:異音・過熱・SMART警告があれば即停止。
- 状況を記録:発生日、直前操作、エラーメッセージ、RAID構成など。
- 復旧ソフトを使わない:上書き・さらなる破壊のリスク。
- 媒体を保護:静電気対策、開封しない、乾燥剤や冷蔵はNG。
- 専門業者へ連絡:重度物理はクリーン設備のあるラボへ。
- 復旧後の検証:目的ファイルの整合性を必ず確認し、二次バックアップへ即時退避。
おすすめデータ復旧業者3選【東京を中心に高信頼・高技術】
万一のトラブル時に相談先を瞬時に決められるよう、技術力・スピード・透明性・セキュリティの観点で3社を厳選し、対応範囲や依頼フローまで掘り下げて解説します。費用は症状(論理/物理)・容量・RAID構成・暗号化の有無などで大きく変動するため、以下はあくまで目安です。最新情報・正式見積もりは必ず各社の公式サイトでご確認ください。
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※ 掲載内容は編集時点の一般的な傾向・目安です。料金や納期・受付方法は症状・容量・在庫・拠点により変動します。最新情報・正式見積りは各社公式サイトをご確認ください。
よくある質問(FAQ)
Q1. バックアップがあるのに復元できないのはなぜ?
そもそもバックアップ対象外だった/世代保持が短く誤削除時点以降しか残っていない/暗号化やアプリのロックで復元に鍵が必要など、設計や運用に起因することが多いです。定期的な試験復元(DR演習)で早期に欠陥を炙り出しましょう。
Q2. 外付けHDDだけで十分?
災害・盗難・ランサムウェアの横展開には弱いです。最低でもクラウド or オフサイトを組み合わせた3-2-1構成にしましょう。
Q3. ランサムウェア対策は?
WORM/immutableなスナップショット、オフライン世代、アカウント分離、特権アクセスのゼロトラスト設計を採用。検知・封じ込め・復旧手順を訓練します。
Q4. どの程度の頻度でバックアップすべき?
RPOが指標です。4時間以内の損失が許容なら4時間ごと、15分以内なら高頻度スナップショット+レプリカが必要です。
Q5. 物理障害っぽい時に自分でできることは?
通電を止める・開封しない・乾燥/冷却など民間療法をしない。専門ラボに症状・型番・容量・発生日・直前操作を伝えましょう。
チェックリスト(導入・運用・緊急対応)
導入(初期設計)
- RPO/RTOの合意(利害関係者と数値化)
- 3-2-1+immutableの採用可否
- オンプレ・クラウドの配分とコスト見積り
- バックアップ対象の網羅(SaaS含む)
運用(平時)
- 監視(失敗ジョブ・容量・遅延)と通知
- 四半期に1回の復元演習と結果レビュー
- 人・権限の棚卸し(退職者、外注アカウント)
緊急対応
- 媒体を保護(通電停止・輸送手順・記録)
- インシデント指揮系統・連絡網
- 証拠保全と広報・顧客対応テンプレート
まとめ:バックアップは「守り」、復旧は「最終手段」

バックアップは守りの仕組み、復旧は最後の砦です。最強の復旧対策は、実は「復旧に頼らなくて済む体制」を整えておくこと。RPO/RTOを据え、3-2-1とimmutableを織り込み、定期的に復元演習を実施しましょう。それでも起きるのが現場です。物理兆候やRAID崩壊が疑われるときは、通電をやめて秋葉原データ復旧スクラッチラボのような専門ラボへ早期相談を。スピードが命です。
データは企業価値・生活の記憶そのもの。今日から設計・運用・訓練という“地味だが効く”施策を回し、万一の際は躊躇なくプロに託しましょう。復旧率が1%でも上がる道を、平時から作れます。